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2011年10月4日火曜日

厄介なヤツめ!このハモグリバエ共が!!!

マメハモグリバエ成虫(京都より提供)

憎いあんちきしょう!

毎年というか一年通してこいつらに悩まされております。。。


マメハモグリバエ
  • 成虫は,体長約2㎜,地色は黄色で,頭部,胸部,脚の一部は光沢のある黒色
  • 幼虫は,黄色のウジ状で体長約3㎜,3齢を経過する。
  • 蛹は褐色,俵状で長さ2㎜前後,蛹化は,地表面や浅い地中で行われる。
  • 1世代経過には,25℃で約17日,15℃では約48日かかる。
  • 適温は,25~30℃,本県では,野外越冬はできないと考えられる。
  • キュウリやメロンなどウリ科作物はあまり好まない。
   【主な寄生植物】
     マメ科:ダイズ,エンドウ
     ナス科:トマト,ナス,ジャガイモ,ピーマン
     セリ科:セルリー,ニンジン
     キク科:シュンギク,レタス,キク,ガーベラ,マリーゴールド
     アブラナ科:ハクサイ,ダイコン,チンゲンサイ
     ユリ科:ネギ,タマネギ
     アカザ科:ホウレンソウ
     その他:宿根カスミソウ,トルコギキョウ
マメハモグリバエ成虫マメハモグリバエ幼虫マメハモグリバエ被害(きく)
成 虫幼 虫被害(きく)
マメハモグリバエ成虫(京都より提供)マメハモグリバエ蛹マメハモグリバエ被害(トマト)
成 虫蛹 被害(トマト)

トマトハモグリバエ
  • 成,幼虫,蛹ともマメハモグリバエ,ナスハモグリバエに酷似し,肉眼での識別は困難
  • 蛹化は,地表面や浅い地中で行われる。葉上で蛹になる場合もある。
  • 1世代経過には,25℃で約18日,15℃では約52日かかる。
  • 比較的涼しい時期に発生が多くなるが,休眠はしないと考えられており,寒冷地での野外越冬の可能性は低い。なお,本県での実態は不明である。
  • マメハモグリバエより寄主範囲は広く,キュウリなどウリ科作物で多発傾向
   【主な寄生植物】
     ナス科:トマト,ナス,ピーマン,ペチュニア
     ウリ科:キュウリ,メロン,カボチャ,シロウリ,ヘチマ,スイカ,マクワウリ
     マメ科:インゲン,大豆,アズキ,ササゲ
     キク科:シュンギク,ゴボウ,マリーゴールド
     アブラナ科:ハクサイ,キャベツ,コマツナ,ブロッコリー,ダイコン,カブ
       
トマトハモグリバエ成虫トマトハモグリバエ蛹(京都より写真提供)トマトハモグリバエ食害キュウリトマトハモグリバエ被害(トマト)
成 虫
トマトハモグリバエ成虫(京都より提供写真)  
成 虫  被害(きゅうり)被害(トマト)


アシグロハモグリバエ
  • 成虫は体長約2㎜,マメハモグリバエ,トマトハモグリバエと似るが,黒色部がより多い。また,名前の由来どおり脚(足)の色が黒ずむ。
  • 幼虫は,体長約3.5㎜,黄白色で,3齢を経過する。
  • 蛹は約2㎜,蛹化は,地表面や浅い地中で行われる。葉上で蛹になる場合もある。
  • 1世代経過には,25℃で約16日,15℃では約40日かかる。
  • 休眠はしないと考えられており,寒冷地での野外越冬の可能性は低い。なお,本県での実態は不明である。
  • マメハモグリバエより寄主範囲は広く,キュウリなどウリ科で多発する傾向がある。

   【主な寄生植物】                                 
     ナス科:トマト,ピーマン,ペチュニア                
     ウリ科:キュウリ,マクワウリ,カボチャ   
     セリ科:セルリー
     キク科:シュンギク,アスター,マリーゴールド
     アブラナ科:ハクサイ,チンゲンサイ                  
     ナデシコ科:宿根カスミソウ,カーネーション
     ユリ科:ネギ
     その他:ホウレンソウ,トルコギキョウ ,インゲン
アシグロハモグリバエ成虫アシグロハモグリバエ幼虫アシグリロハモグリバエきゅうりの被害アシグロハモグリバエ小ネギ被害
成 虫幼 虫被害(きゅうり)
アシグロハモグリバエ成虫(白い点は産卵痕)アシグリロハモグリバエ蛹アシグロハモグリバエガーベラ被害
成虫と産卵痕被害(ガーベラ)被害(小ねぎ)


ナスハモグリバエ
  • 成虫,幼虫ともマメハモグリバエ,トマトハモグリバエ,アシグロハモグリバエに酷似し,肉眼での識別は難しい。
  • 老齢幼虫は黄色で,体長約2.5㎜
  • 蛹化は地表面や浅い地中で行われる。
  • 1世代経過には,25℃で約19日,15℃では約46日かかる。
  • 寒冷地における年間発生回数は、施設栽培で5~6世代、露地栽培で4世代程度である。
  • 越冬は,地表下1~2cmで蛹で行われる。
  • キク科植物に寄生しない。                            
   【主な寄生植物】                                
      ナス科:トマト,ナス,ジャガイモ                      
      ウリ科:キュウリ,メロン,スイカ                     
      アブラナ科:ハクサイ,ダイコン                        
      ナデシコ科:宿根カスミソウ                      
ナスハモグリバエ成虫ナスハモグリバエ成虫(京都より提供写真)ナスハモグリバエ蛹(京都より写真提供)ナスハモグリバエ宿根カスミソウ被害
成 虫 成 虫被害(宿根カスミソウ)


ネギハモグリバエ
  • 成虫は,体長約2~3㎜前後,上記の4種と似ているが,小楯版(背中の一部)の色が黒色であることから,肉眼での区別は可能である(第 図)。
  • 成虫の産卵痕は規則正しく並んだ白い点になる。
  • 幼虫は、葉肉内を食害しながら前進し、食べられた部分は白い筋のようになる。
  • 地表近くの土中または葉の表面で蛹化する。
  • 越冬は,地表下1~2cmで蛹で行われる。
  • 1世代経過には,25℃で約23日,15℃では約68日かかる。
  • 5月頃から秋まで発生し、年間4~5世代を繰り返す。
  • ユリ科ネギ属だけに寄生する。
   【主な寄生植物】                                  
      ユリ科:ネギ,タマネギ,ラッキョウ,ニラ          
ネギハモグリバエ成虫ネギハモグリバエ成虫ネギハモグリバエ産卵痕と成虫ネギハモグリバエ被害
成 虫成 虫成虫と産卵痕(ネギ)被害(ネギ)



ナモグリバエ
  • 成虫は,体長約1.7~2.5㎜,全身が灰色~黒色,前5種とは属が異なり,肉眼でも容易に区別できる。
  • 老齢幼虫は,乳白色で体長約3㎜
  • 蛹は,淡褐色で体長2.7㎜程度,蛹化は葉内で行われる。
  • 越冬は,葉内の蛹で行われる。
  • 露地では,年間3~4世代であるが,施設では多数回世代を繰り返す。晩春~初夏及び秋に多発し,盛夏には激減する。
  • 1世代経過には,25℃で約14日,15℃では約30日かかる。
  • 別名エンドウハモグリバエともよばれ,エンドウなどマメ科で多発する。    
   【主な寄生植物】                           
      マメ科:エンドウ,ソラマメ,インゲン,ササゲ,アズキ,ダイズ,スイートピー
      キク科:レタス,シュンギク,キク,キンセンカ,アスター
      アブラナ科:ハクサイ,ダイコン,キャベツ,カブ
      ナス科:トマト
      ウリ科:メロン,スイカ
ナモグリ成虫ナモグリバエ被害葉キクナモグリバエ被害葉シュンギク
成 虫被害(キク)被害(シュンギク)
ナモグリバエ幼虫ナモグリバエ葉内蛹ナモグリバエ蛹
 幼 虫 葉内の蛹



トピックス「ハモグリバエ類の多産系は?」
よく似た3種類の雌成虫の寿命と一生の間に生む卵の数を調べた結果です。
雌は死ぬまで産卵を続けるため,寿命が長いほど多産系であることがわかります。

ハモグリバエの寿命と産卵数
種名  寿命  産卵数
トマトハモグリバエ
マメハモグリバエ
ナスハモグリバエ
28.1日
18.6日
9.0日
639.6個
203.6個
91.4個
(25℃ 15時間明,9時間暗条件  徳丸ら 2003年)





種類の見分け方
  ハモグリバエ類を正確に見分けるには,顕微鏡を用いた専門的な方法が必要ですが,ここで取り上げた6種類について,比較的簡単に見分ける方法を紹介します。
ナモグリバエと他のハモグリバエ類の違い
  • ナモグリバエの成虫は,全身が灰色~黒色であるが,他のハモグリバエ類は黒色と黄色の2色からなる(第1図)。
  • ナモグリバエは葉の中で蛹になるが,他のハモグリバエ類は葉の外で蛹になる。
ナモグリバエと他のハモグリバエ類の違い
第1図 ナモグリバエと他のハモグリバエ類の成虫

ネギハモグリバエと他のLiriomyza 属の違い
  • 小楯板(背中の一部)の色が,ネギハモグリバエは黒色,その他は黄色(第2図)
  • ネギハモグリバエは,他の種類に比べ全体に光沢がない。
ネギハモグリバエと他のliriomyza属の違い
第2図 Liriomyza 属成虫の識別点

加害植物からの見分け方
  • ナスハモグリバエはキク科に寄生しない。
  • ネギハモグリバエはユリ科のネギ属しか寄生しない。
  • マメハモグリバエはメロンなどウリ科にはあまり寄生しない。

防除対策
いずれも,多発してしまうと防除が困難になるので,発生の予防に重点を置きます。

 ○定植時

  ハモグリバエの食害痕や産卵痕のある苗は植えない。

  防虫網の設置(施設では,出入り口や換気口に設置)

  粒剤の植穴処理(農薬使用基準の遵守)


 ○生育期(薬剤防除)

   発生初期から防除

   ハモグリバエの種類や作物によって使用する薬剤は異なる(県の防除指針参照)

   農薬使用基準の遵守

   抵抗性対策(同じ系統の殺虫剤を連用しない)


 ○収穫後

  冬季:施設の被服資材を剥いで,寒さに当てる(野外越冬できない種類)

  夏季:施設を高温にして殺虫する。蒸し込み,太陽熱消毒,熱水消毒



トピックス「ハモグリバエ類の越冬


  • 土着のハモグリバエ類(ナモグリバエなど)は,「休眠」といって,耐寒性を高めた状態で越冬しますが,侵入害虫のマメハモグリバエ,アシグロハモグリバエ,トマトハモグリバエは休眠状態が認められていないため,本県の野外での越冬は難しいと考えられています。
  • 侵入害虫のハモグリバエ類がそれでも勢力を拡大しているのは,県内には温室やビニールハウスなど冬でも暖かい場所が多いためです。
  • 平成16年12月から平成17年の3月まで,県北部のアシグロハモグリバエが発生しているホウレンソウ栽培ビニールハウス(無加温)においてハウス内の気温とハモグリバエの発生状況を調査しました。
  • この年は厳冬で,ハウス内でもかなりの低温になりましたが,ハモグリバエは少数ながら生存していました。このことから,暖冬年であれば,県南部あたりでは野外越冬が可能かもしれません。

ハウス内の最高,最低温度,黄色トラップ捕獲数および成虫捕獲数

【参考資料】
本ページは,本県の調査結果のほか以下の資料を参考に作成しました。
(1)岩崎 暁生ら (2000)植物防疫54(4):142~147
(2)岩崎 暁生 (2003)今月の農業47(7):19~23
(3)岩崎 暁生ら (2004)植物防疫58(1):13~19
(4)岩崎 暁生 (2004)今月の農業48(12):17~21
(5)小澤 朗人 (2003)今月の農業47(7):34~38
(6)西東 力 (2004)今月の農業48(12):28~32
(7)徳丸 晋 (2002)今月の農業46(10):13~17
(8)徳丸 晋・阿部 芳久(2003)日本応用動物昆虫学会誌 47(4):143~152
(9)山村 裕一郎(2004)今月の農業48(7):46~47

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